特養と名前が似ているが、入り方がまったく違う
養護老人ホームは、本人が施設と契約して入る場所ではありません。市町村が「措置」として入所を決めます。遠野市は「養護老人ホームは介護保険施設ではありません。」と明記しています。だから介護保険の要介護認定があっても、それだけでは入れません。
特別養護老人ホームとの違い
名前が似ている2つの施設(2026年9月12日確認)
| 養護老人ホーム | 特別養護老人ホーム | |
|---|---|---|
| 入り方 | 市町村の措置(申し込んで契約するのではない) | 施設との契約 |
| 介護保険 | 「養護老人ホームは介護保険施設ではありません」(遠野市) | 介護保険施設 |
| 入る理由 | 環境上の理由 + 経済的理由 | 要介護度 |
| 決めるのは | 市町村(入所判定委員会の意見を聴く) | 施設 |
出典:遠野市・御所市の公表内容。取扱いは市区町村ごとに異なります。
いちばん間違えやすいのは「要介護度が高いほど入りやすい」と思うことです。養護老人ホームで見られるのは、要介護度ではなく「住まいと家計の事情」です。
御所市は健康状況について「入院加療を要する状態でないこと。」を基準に挙げています。つまり医療が必要な状態は対象外です。
2つの理由の両方に当たること
遠野市は対象を「65歳以上の高齢者で施設入所の意思があり」、そのうえで環境上の理由と経済的理由の両方を挙げています。
遠野市が公表している要件
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 年齢・意思 | 65歳以上の高齢者で施設入所の意思があること |
| 環境上の理由 | 心身上の障害のため日常生活を送ることが困難であり、養護者がいない場合/同居者との同居の継続が心身を著しく害すると認められる場合/住まいがあっても極めて環境が悪く、住宅での生活が困難と認められる場合 |
| 経済的理由 | 生活保護を受給している/市町村民税非課税世帯/課税されていても市町村民税均等割のみの世帯 |
出典:遠野市の公表内容(2026年9月12日確認)。
環境上の理由の2つめ「同居者との同居の継続が心身を著しく害すると認められる場合」に注目してください。家族と一緒に住んでいても、その同居が本人を傷つけているなら対象になり得ます。
「養護者がいない」だけが条件ではありません。ここを知らずに「家族がいるから無理だ」と諦めてしまうのが、いちばん惜しいところです。
御所市は生活環境の基準を「在宅での生活が困難であると認められること。」、経済的事情を「老人福祉法施行令第6条に規定する事項に該当すること。」としています。自治体によって、要綱の書き方がここまで違います。
決まるまでの順番
遠野市が公表している流れ
- ① 相談窓口は健康福祉の里福祉課高齢福祉係。まず相談から始まります。
- ② 実態調査市町村の職員が、住まいと暮らしの状況を実際に見にきます。
- ③ 入所判定委員会御所市も「入所判定審査会の意見を聴くものとする」としています。
- ④ 待機者登録判定を通っても、空きが出るまで待つことになります。
- ⑤ 入所措置市町村が措置として決定します。
申し込んで順番を待つのではなく、「相談 → 調査 → 判定」を経て、市町村が決めます。本人や家族が施設を選んで契約する形ではありません。
御所市の要綱は、審査会が何を見るのかも書いています。第2条第2項は「健康状況、生活環境、経済的事情等について、総合的に判定を行い」としています。どれか1つではなく、3つをまとめて見るということです。
急ぐときの例外
この順番には例外があります。御所市の要綱 第2条第3項は、高齢者虐待により「生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる老人」については、「審査会の開催を待つことなく入所措置を行うことができる」としています。
つまり、判定委員会の開催を待たずに入所させる道が、制度としてあらかじめ用意されています。「次の委員会は来月だから」と言われて諦める場面ではありません。
ただしこれは御所市の要綱の条文です。同じ規定が置かれているかどうかは市区町村ごとに違います。危険が差し迫っていると感じるときは、順番を待つ前に、まず市区町村の高齢福祉の担当課に「いま危ない」と伝えてください。
費用の決まり方
遠野市は「入所者本人の負担と扶養義務者の負担があり、市の費用徴収基準額によって決定します。」としています。
定額ではありません。本人の収入と、扶養義務者の負担能力を見て、市町村が決めます。経済的理由が要件に入っている制度なので、負担も所得に応じた形になります。
扶養義務者にも負担が生じる点は、先に家族で共有しておくほうがもめません。
入所したあとに変わること
措置は入所して終わりではありません。御所市の要綱は第5条で、措置の変更と廃止を定めています。そのなかに「3箇月以上」の入院による廃止が書かれています。
入所中に長く入院すると、措置そのものが廃止されることがあるということです。契約で借りている部屋ではないので、留守にしていれば席が残るとはかぎりません。
入る前の段階でも、健康状態は見られます。遠野市は「身体状況としてある程度は身の回りのことは自分でできる方が対象となり、常時介護を要する方は対象になりません」と書いています。御所市も健康状況の基準に「入院加療を要する状態でないこと。」を挙げています。
養護老人ホームは「介護を受ける場所」ではなく「住まいと家計の事情で、居宅で養護を受けることが困難な人を市町村が措置する場所」です。遠野市はこの施設を「65歳以上の方で、環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な方を、市が措置する老人福祉施設」と説明しています。
在宅で使える制度は別にまとめています。→ 配食サービス/緊急通報システム/家事援助
よくある取りこぼし
要介護認定があれば入れると思った
養護老人ホームは介護保険施設ではありません。見られるのは住まいと家計の事情です。
家族がいるから対象外だと思った
「同居者との同居の継続が心身を著しく害すると認められる場合」も環境上の理由に入ります。
施設に直接申し込もうとした
市町村の措置です。窓口は市区町村の高齢福祉の担当課です。
入院中に申し込もうとした
御所市は「入院加療を要する状態でないこと。」を基準に挙げています。
判定が通れば すぐ入れると思った
遠野市の流れには「待機者登録」が入っています。空きが出るまで待ちます。
費用が定額だと思った
「市の費用徴収基準額によって決定します」。本人と扶養義務者の負担能力で変わります。
常時介護が必要な人の行き先だと思った
遠野市は「常時介護を要する方は対象になりません」としています。逆です。
入所すればずっと居られると思った
御所市の要綱は第5条で措置の変更と廃止を定めています。「3箇月以上」の入院などで廃止されます。
確認に使った一次情報
いずれも2026年9月12日に確認した公表内容です。要件・判定の手順・費用の決め方は市区町村ごとに異なります。
介護保険で頼めないことの記事一覧
- 介護保険で頼めないこと一覧
- 通院の付き添いを頼む
- 遠距離介護の負担を減らす
- 退院直後の在宅介護
- 訪問理美容
- 高齢者の配食サービスは安否確認とセット
- 高齢者の緊急通報システム
- 介護保険の訪問介護を使い切ってからの家事援助
- 介護保険とは別に出る住宅改修の給付
- 社会福祉法人等による利用者負担軽減
- ケアプランは自分で作れる
- 特別障害者手当
- おむつと日常生活用具
- 障害者控除対象者認定書
- 高額介護サービス費
- 受領委任払い
- 家族介護慰労金
- 障害福祉の負担上限月額
- 高額医療・高額介護合算療養費
- 重度障害者医療費助成
- 自動車税の減免
- 住宅改修が必要な理由書
- 住宅改修の事前申請
- 住宅改修20万円の枠
- 借家の住宅改修と承諾書
- 福祉用具の貸与と販売の選択制
- 住宅改修の手続き
- 住宅改修の手続き
- 福祉用具購入費の受領委任払い
- 高額療養費の受領委任払い
- 介護保険の住所地特例
- 介護保険の適用除外施設
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。