先に確認するのは料金ではなく、対象になるかと助成があるか
訪問理美容を調べると、まず事業者の料金表が出てきます。ただしその前に確認すべきことが2つあります。ひとつは法令上の対象にあたるか、もうひとつは市区町村の助成が使えるか。順序を逆にすると、使えたはずの制度を知らないまま自費で払うことになります。
出張でしてもらえる人の条件
美容師・理容師は、原則として美容所・理容所以外の場所で業を行うことができません。出張でしてもらえるのは、政令で定められた場合に限られます。そのひとつが「疾病その他の理由により理容所又は美容所に来ることができない者」に対して行う場合です。
この「疾病その他の理由」が何を指すかについて、厚生労働省が通知を出しています(平成28年3月24日 生食衛発第324001号)。
通知が示している対象(厚生労働省の通知より)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 本人の状態による場合 | 疾病のほか、骨折・認知症・障害・寝たきり等の要介護状態にある等、社会通念上、理容所又は美容所に来ることが困難と認められる者 |
| 家族の養護・介護による場合 | 自宅で乳幼児の育児または要介護高齢者等の介護を常時行っており、他の支援が利用困難で、当該家族の安全性を確保することが困難になると認められる者 |
対象にあたらない人への出張施術は法違反となります。事業者が対象を確認するのは、そのためです。
「要介護認定を受けていないと頼めない」わけではありません。骨折や障害、認知症も挙げられています。判断の基準は認定の有無ではなく、来店が困難と認められるかどうかです。
介護している家族も対象になり得る
上の表の下段は、あまり知られていません。介護されている本人だけでなく、常時介護している家族自身も、条件を満たせば出張の対象になり得ます。
下段に当てはまるかの考え方
自宅で要介護の親を常時介護しており、目を離せない
デイサービスに行っている時間帯なら外出できる
自宅で乳幼児の育児を常時行っており、預け先がない
一時的に忙しくて行く時間がない
市区町村の助成制度
多くの市区町村が、在宅の高齢者や障害のある方を対象に訪問理美容の助成制度を設けています。名称は「在宅高齢者訪問理美容サービス」「訪問理美容サービス券」など、自治体によって異なります。
窓口で確認する6項目
- 制度があるか:市区町村の高齢福祉課・介護保険課などが窓口です
- 対象者の要件:要介護度、年齢、在宅であること、外出が困難であることなど
- 回数の上限:年に何回までか
- 助成の形:利用券(チケット)の交付か、費用の一部助成か
- 指定事業者の有無:登録された事業者でないと使えない場合があります
- 申請の時期:年度単位で受付期間が決まっていることがあります
「指定事業者の有無」を先に確認してください。事業者を決めてから助成を調べると、その事業者が対象外で、選び直しになることがあります。順序は「助成を確認 → 使える事業者から選ぶ」です。
担当のケアマネジャーがいる場合、この確認はケアマネジャーに聞くのが早い方法です。地域の制度と事業者の両方を把握していることが多いためです。
訪問美容の対応範囲と料金を確認する
対応地域・施術内容・料金は事業者の公式サイトに記載があります。助成の指定事業者かどうかも確認してください。
- 料金・対応範囲は各社公式サイトの公表値です
- 対応可能地域は事業者により異なります
- 自治体の助成制度は市区町村により異なります
介護保険との関係
訪問理美容は介護保険のサービスではありません。訪問介護のヘルパーに散髪を頼むことはできず、理美容師の資格を持つ人が行う必要があります。
何がどの制度か
| やること | 使える制度 | 費用の出どころ |
|---|---|---|
| カット・カラー・パーマなどの理美容 | 介護保険は使えない | 自費。市区町村の助成があれば一部 |
| 整髪・洗髪などの身体介護に含まれる範囲 | 訪問介護(身体介護) | 介護保険 |
| 理美容師による出張施術 | 自費サービス | 自費+自治体の助成 |
| 施設に入所している場合の理美容 | 施設が手配していることがある | 自費。施設ごとに扱いが違う |
「ヘルパーに髪を切ってもらう」ことはできません。整えることと、理美容の施術は別に扱われます。
介護保険で頼めることと頼めないことの切り分けは、頼めないこと一覧にまとめています。
事業者に確認する項目
問い合わせのときに聞くこと
| 項目 | 聞くこと | なぜ効くか |
|---|---|---|
| 対応地域 | 自宅の住所が範囲内か | 範囲外だと出張費が別に必要か、そもそも不可 |
| 料金の内訳 | 技術料と出張費が別か、込みか | 総額で比べないと安く見えることがある |
| 寝たまま対応 | ベッド上でカットできるか | 起き上がれない場合は必須の条件 |
| 洗髪の可否 | 水を使うか、ドライシャンプーか | 自宅の設備によってできることが変わる |
| 車椅子対応 | 座位のまま施術できるか | 移乗の手間が変わる |
| 自治体の指定 | 助成制度の指定事業者か | 助成が使えるかがここで決まる |
| キャンセル | 体調不良で当日に中止する場合の扱い | 介護では当日の体調変化がよくある |
最後の項目は見落とされがちです。当日の体調で中止になることは珍しくありません。先に条件を聞いてください。
当日までに用意するもの
準備の順序
- ① 場所を決める椅子に座れるか、ベッド上か。動線に物がないか確認する。
- ② 床を養生する新聞紙やレジャーシートを敷く。切った髪の片づけが楽になる。
- ③ 電源を確保するバリカンやドライヤーを使う場合、コンセントの位置を確認する。
- ④ タオルを用意する何枚必要かは事前に聞いておく。
- ⑤ 体調を伝える当日の様子、服薬、皮膚の状態など、伝えるべきことを整理しておく。
- ⑥ 支払い方法を確認する現金のみか、助成券が使えるか。
②の養生だけで、終わったあとの負担がかなり変わります。介護をしながらの片づけは思った以上に手間です。
理美容以外で頼みたいことも相談する
介護保険の対象外になる用事は、保険外サービスで頼める場合があります。相談は無料です。
- 料金・対応範囲は各社公式サイトの公表値です
- 対応可能地域は事業者により異なります
- 自治体の助成制度は市区町村により異なります
よくある失敗
事業者を決めてから助成を調べる
指定事業者でないと使えないことがあります。順序は助成が先です。
料金を技術料だけで比べる
出張費が別にかかることがあります。総額で比べてください。
対象にあたるか曖昧なまま依頼する
当日に断られることがあります。状況を正確に伝えてください。
ヘルパーに散髪を頼もうとする
理美容は訪問介護では行えません。理美容師の資格が必要です。
当日キャンセルの条件を聞いていない
介護では体調による中止が起こります。先に確認してください。
介護している家族自身は対象外だと思い込む
通知には、常時介護している家族も対象になり得ると書かれています。
よくある疑問
よくある疑問
要介護認定を受けていなくても頼めますか。
介護している自分の髪も切ってもらえますか。
介護保険は使えますか。
助成はどこに聞けばよいですか。
施設に入っている場合はどうなりますか。
寝たきりでもカットできますか。
介護保険で頼めないことの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。