上限を超えた分は戻る。ただし申請しないと1円も戻らない
介護保険の自己負担には、1か月ごとの上限額があります。超えた分は申請すれば戻ってきます。ところが「使った月から案内が届くまで2か月以上あく」「対象にならない費用が多い」「時効は2年だが起算日が3通りある」という具合に、取りこぼしやすい作りになっています。ここを整理します。
なぜ気づかないのか
この制度で取りこぼしが起きるのは、3つの時間差があるからです。
気づけない3つの理由
案内が届くのは、使った月の2か月以上あと
毎月申請するものだと思ってしまう
引き落とし額を見ていない
判断するのは市区町村です。超えていれば向こうから案内が来ます。ただし住所や口座の情報が古い、年度途中で保険者が変わった、といった場合は届かないことがあります。
上限額の区分
上限額は所得の区分で決まります。名古屋市が公表している区分は次のとおりです。
1か月あたりの負担上限額(名古屋市の公表内容より)
| 区分 | 上限額 |
|---|---|
| 生活保護を受けている方など | 15,000円(個人) |
| 世帯全員が市町村民税非課税で、老齢福祉年金を受けている方 | 15,000円(個人) |
| 世帯全員が市町村民税非課税 | 24,600円(世帯合計) |
| 課税所得380万円未満 | 44,400円 |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円 |
| 課税所得690万円以上 | 140,100円 |
区分の名称と金額は市区町村の公表資料で確認してください。世帯の課税状況で変わるため、同じ介護度でも上限額は人によって違います。
「世帯合計」と書かれている区分がある点に注意してください。同じ世帯に介護保険を使っている方が2人いる場合、2人分の自己負担を合わせて上限と比べます。ところが、申請は別々に必要です。佐世保市は「同一世帯に複数利用者がいる場合、それぞれ申請が必要です」としています。合算するのに申請は別、というねじれがあります。
対象にならない費用
ここがいちばんの落とし穴です。施設や事業所に払っている金額のうち、この制度の対象になるのは一部です。
対象になるもの/ならないもの(名古屋市の公表内容より)
| 扱い | 内容 |
|---|---|
| 対象になる | 介護保険のサービスを使ったときの利用者負担(1割〜3割) |
| 対象にならない | 福祉用具の購入にかかる負担 |
| 対象にならない | 住宅改修にかかる負担 |
| 対象にならない | 施設における居住費・食費 |
| 対象にならない | 理美容代などの日常生活に要する実費 |
| 対象にならない | 配食サービスにかかる負担 など |
施設に入っている場合、請求書の金額のうち居住費と食費が大きな割合を占めます。その部分はこの制度では戻りません。
「施設に月15万円払っているのに、上限44,400円を超えた分が戻ってこない」という誤解は、ここから生まれます。15万円のうち、介護保険の利用者負担にあたる部分だけが対象です。居住費・食費・日常生活費は別枠です。
居住費と食費を下げたい場合は、この制度ではなく別の制度になります。そちらは負担限度額認定です。2つは名前が似ていますが、対象がまったく違います。
申請は初回だけでよい
名古屋市は次のように示しています。
初回のみ申請いただければ、以後は限度額を超過した月ごとに、自動的に口座に振り込まれます。
1回出せば、以降は自動です。毎月書類を出す必要はありません。ここを知らずに「手続きが面倒だから」と最初の1回を出さないでいると、該当した月すべてが未申請のまま流れます。
最初の1回で確認しておくこと
- 振込先の口座(本人名義か、代理の口座か)
- 本人が亡くなったあとに振り込まれる分の受け取り方(自治体によって扱いが違います)
- 住所や口座を変えたときに、届け出が必要かどうか
- 同じ世帯に利用者が2人いる場合、それぞれ申請が要るか
時効2年と、3通りの起算日
過去分をさかのぼれるかどうかは、起算日で決まります。佐世保市は次のように示しています。
サービス提供月(利用した月)の翌月の1日(勧奨通知を送付した場合は通知が到着した日の翌日)を起算日とし、2年間です。
さらに、支払った時期によっても変わります。
その支払った翌日が起算日となり、そこから起算して2年間請求権があります。
起算日の3通り(佐世保市の公表内容より)
| 状況 | 起算日 |
|---|---|
| 通常 | サービスを利用した月の翌月1日 |
| 市区町村から勧奨通知が送られた | 通知が到着した日の翌日 |
| 自己負担分を、利用した月の翌月1日以降に支払った | 支払った日の翌日 |
起算日が後ろにずれるほど、請求できる期間も後ろにずれます。「2年前だからもう無理」と決めつける前に、いつ支払ったかを確認してください。
「もう2年過ぎた」と思っても、支払った日が遅ければ、まだ請求できる場合があります。領収書か引き落としの記録で、いつ払ったかを先に確認してください。
負担限度額認定との違い
名前が似ていて、混同されます。効く場所がまったく違います。
2つの制度の違い
| 高額介護サービス費 | 負担限度額認定 | |
|---|---|---|
| 何が下がるか | 介護保険の利用者負担(1〜3割)のうち、月の上限を超えた分 | 施設の居住費と食費 |
| どこで使えるか | 在宅・施設どちらも | 特養・老健・介護医療院・ショートステイ |
| お金の動き | いったん払って、あとから戻る | はじめから請求額が下がる |
| 主な条件 | 所得区分による上限額 | 世帯全員が住民税非課税で、預貯金が基準以下 |
| 申請 | 初回のみ(自治体による) | 毎年(有効期間は原則その年の7月31日まで) |
両方に当たることがあります。片方を使っているからもう片方は関係ない、ということはありません。
確認の順序
この順で確認すると、抜けません
- 直近3か月の支払額を並べる施設や事業所からの請求書、または引き落としの記録を見ます。介護保険の利用者負担にあたる部分がいくらかを、請求書の内訳で確認します。
- 自分の区分の上限額を確認する市区町村の公表資料か窓口で、世帯の課税状況にもとづく上限額を聞きます。
- 超えている月があるのに案内が来ていないなら、窓口に聞く住所や口座の情報が古い、年度途中で保険者が変わった、といった理由で届いていないことがあります。
- 過去分があるなら、支払った日を確認する起算日が3通りあります。「2年前だから無理」と決める前に、いつ払ったかを見てください。
- 初回の申請を出す以降は自動振込になる自治体が多いため、ここを越えれば手続きは終わりです。
よくある取りこぼし
施設の請求額全体で上限と比べてしまう
居住費・食費・日常生活費は対象外です。請求書の内訳で「介護保険の利用者負担」の行を見てください。全体で比べると、超えているのに気づかない、または超えていないのに期待してしまいます。
毎月申請が必要だと思って諦める
初回のみでよい自治体が多いです。1回出せば以降は自動で振り込まれます。
案内が来ないから対象外だと判断する
案内は利用月の2か月以上あとです。また、住所や口座の情報が古いと届きません。心当たりがあれば窓口に確認してください。
世帯に2人いるのに、1人分しか申請しない
上限は世帯で合算されますが、申請はそれぞれ必要とされている自治体があります。合算されるから1枚でよい、とは限りません。
2年過ぎたと思い込む
起算日は、利用した月の翌月1日/勧奨通知が届いた日の翌日/支払った日の翌日の3通りです。支払いが遅かった分は、まだ間に合うことがあります。
制度で戻らない部分を、必要な分だけ頼む
居住費や食費、日常生活の実費はこの制度では戻りません。介護保険で頼めない付き添いや家事を、必要な時間だけ頼む選択肢もあります。
- 相談・見積もりは無料です
- 介護保険では対応できない内容にも対応しています
- 24時間365日の相談体制があります
よくある疑問
よくある疑問
いくら戻りますか。
施設に月15万円払っています。上限44,400円を超えた分が戻りますか。
福祉用具を買った分も対象になりますか。
毎月申請が必要ですか。
案内が届きません。対象外ということですか。
過去の分もさかのぼれますか。
負担限度額認定と何が違いますか。
同じ世帯に利用者が2人います。1回の申請で済みますか。
本人が亡くなったあとに振り込まれる分はどうなりますか。
医療費が高額なときの制度と合わせられますか。
→ 保険で頼めない4分類/在宅の重度の方への手当/手帳がなくても使える所得控除/施設の居住費・食費を下げる認定
介護保険で頼めないことの記事一覧
一次情報の確認先
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