施設は、この制度を教えてくれるとは限りません
介護保険の施設に入ると、介護サービス費のほかに食費と居住費(部屋代)がかかります。これを下げる制度が「負担限度額認定」です。ところがこの制度、申請した月の初日からしか適用されません。入所してから半年後に知っても、その半年分は戻ってきません。
何が下がるのか
介護保険の施設に入ったときにかかる費用は、大きく3つに分かれます。
施設でかかる費用の内訳
| 費目 | 内容 | 負担限度額認定で下がるか |
|---|---|---|
| 介護サービス費 | 介護そのものの費用。所得に応じて1〜3割負担 | ×(高額介護サービス費という別の制度があります) |
| 食費 | 1日あたりで決まっています | ○ 下がります |
| 居住費(部屋代) | 多床室・従来型個室・ユニット型個室で額が違います | ○ 下がります |
| 日常生活費 | 理美容代、日用品、レクリエーション費など | × |
正式には「特定入所者介護サービス費」といいます。市区町村に申請して「負担限度額認定証」を受け取り、施設に提示すると、その月の初日から食費と居住費が軽減されます。
対象になる施設・ならない施設
ここを間違えると、施設選びの前提が変わります。
対象の範囲
| 対象 | |
|---|---|
| ○ 対象になる | 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)/介護老人保健施設/介護医療院/ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護) |
| × 対象にならない | 有料老人ホーム/サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)/グループホームなど |
ショートステイが対象に入っているのは見落とされがちです。在宅で介護しながら定期的にショートステイを使っている場合も、要件を満たせば食費・居住費が下がります。
逆に、有料老人ホームやサ高住はこの制度の対象外です。月額の見積もりを比べるときは、「この施設は負担限度額認定が使えるか」を条件に入れてください。同じ月額でも、認定が使える施設なら実際の支払いは下がります。
2つの要件
要件は所得と資産の2本立てで、両方を満たす必要があります。
要件
| 内容 | 見落としやすい点 | |
|---|---|---|
| 所得の要件 | 世帯全員が住民税非課税であること | 配偶者は別世帯でも見られます。世帯分離をしても、配偶者が課税されていれば対象外です |
| 資産の要件 | 預貯金等が段階ごとの基準額以下であること | 通帳の写しは申請日の直近から2か月前までの履歴が求められます |
「世帯分離すれば通る」という話を聞くことがありますが、配偶者については別世帯でも判定に入ります。ここが最も多い誤解です。
預貯金等には、普通預金・定期預金のほか、有価証券や現金なども含まれます。申請の直前に動かしても、2か月分の履歴で分かる仕組みです。虚偽の申告は、あとで加算金を含めた返還を求められることがあります。
段階と預貯金の基準
利用者負担段階と預貯金等の基準額(確認した自治体の公表値)
| 段階 | 所得の目安 | 単身 | 夫婦 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者等 | 制限なし | 制限なし |
| 第1段階 | 老齢福祉年金受給者 | 1,000万円以下 | 2,000万円以下 |
| 第2段階 | 合計所得+年金収入が 82.65万円以下 | 650万円以下 | 1,650万円以下 |
| 第3段階① | 82.65万円超 〜 120万円以下 | 550万円以下 | 1,550万円以下 |
| 第3段階② | 120万円超 | 500万円以下 | 1,500万円以下 |
| 第4段階 | 上記に当たらない | — | 対象外 |
段階が下がるほど負担額は小さくなります。金額は自治体と年度で改定されるため、申請時点の数字を窓口で確認してください。第3段階が①②に分かれているのは、令和3年8月からの取り扱いです。
さかのぼらない
この制度でいちばん取り返しがつかないのが、ここです。
適用の始まり
| 内容 | |
|---|---|
| 有効期間 | 申請した月の初日から、翌年7月31日まで |
| さかのぼり | ありません。申請より前の月の分は軽減されません |
4月に入所して10月に申請すると、4月から9月までの6か月分は、軽減されない額のままです。「申請した月の初日から」なので、月の途中で申請してもその月は全部対象になります。月をまたぐ前に出すのが得です。
入所が決まったらこの順で動く
- ① 施設が対象かを確認する特養・老健・介護医療院・ショートステイなら対象。有料老人ホーム・サ高住は対象外です。契約の前に確認してください。
- ② 世帯全員と配偶者の課税状況を確認する配偶者は別世帯でも見られます。課税されていれば対象外なので、ここで分かれば手間が省けます。
- ③ 預貯金等を集計する通帳の写しは申請日の直近から2か月前までの履歴が要ります。複数口座があれば全部そろえます。
- ④ 市区町村の介護保険の窓口に申請する入所した月のうちに出す。1か月遅れれば1か月分が消えます。
- ⑤ 認定証が届いたら施設に提示する提示して初めて請求額に反映されます。受け取っただけでは変わりません。
- ⑥ 毎年7月に更新の案内を確認する有効期間は7月31日まで。更新しないと8月から軽減がなくなります。
毎年8月に切れる
有効期間は翌年の7月31日までです。毎年更新が必要で、更新を忘れると8月分から軽減がなくなります。
更新の案内は市区町村から届きますが、本人あての郵便が施設に届いている場合、家族が気づかないことがあります。施設に「役所からの郵便はどう扱われるか」を確認し、7月に更新があることを家族のカレンダーに入れておいてください。
なぜ自分から聞く必要があるのか
この制度は、施設が必ず案内してくれるとは限りません。理由を知っておくと、動き方が変わります。
案内されにくい理由
施設にとっては手続きが増える
預貯金の話は施設から切り出しにくい
入所の手続きが立て込んでいる時期に重なる
施設探しの情報サイトは「入居後に費用を下げる話」を扱いにくい
聞く相手は、施設ではなく市区町村の介護保険の窓口か、担当のケアマネジャーです。「負担限度額認定の対象になりますか」の一言で足ります。
施設に入るまでの間、在宅で足りない部分を埋める
入所を待つ間の付き添いや家事は、保険外のサービスで対応できます。相談・見積もりは無料です。
- 相談・見積もりは無料の場合があります
- 掲載内容は各社公式サイトの公表値です
- サービス内容は地域により異なります
→ 入院してすぐやること/車いすはどちらの制度で用意するか/在宅の重度の方への手当/手帳がなくても使える所得控除/おむつ・用具の費用が出る制度
よくある失敗
入所してから何か月も経って申請する
申請した月の初日からで、さかのぼりません。入所した月のうちに出す。これだけで数万円単位で変わります。
世帯分離すれば通ると思う
配偶者については、別世帯でも課税状況が見られます。世帯分離だけでは要件を満たしません。
有料老人ホームで使えると思って見積もる
対象は特養・老健・介護医療院・ショートステイです。施設を比べる段階で、この違いを条件に入れてください。
認定証を受け取っただけで安心する
施設に提示して初めて請求に反映されます。届いたらすぐ渡してください。
7月の更新を忘れる
有効期間は7月31日まで。更新しないと8月分から全額に戻ります。本人あての郵便が施設に届く場合はとくに注意。
ショートステイでは使えないと思い込む
ショートステイも対象です。在宅介護で定期的に使っている場合、申請していないと損をしています。
よくある疑問
入所前に申請できますか。
預貯金はどこまで申告しますか。
配偶者と世帯を分けています。対象になりますか。
ショートステイでも使えますか。
有料老人ホームやサ高住は対象外ですか。
介護サービス費そのものは下がりませんか。
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一次情報の確認先
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