手帳の等級で決まる制度ではない。診断書で判定される
特別障害者手当を調べると、出てくるのはお住まいの市区町村のページか、厚生労働省の一文だけです。市区町村は自分の市の案内しか書かず、国は要件の骨格しか書きません。そのあいだにある「実際に何で決まるのか」「どういうときに出ないのか」が、どこにもまとまっていません。ここではその部分を整理します。
どんな制度か
特別障害者手当は、在宅で、常時特別の介護を必要とする重度の障害がある方に、国が現金を支給する制度です。介護保険のサービスでも、障害福祉サービスでもありません。使いみちは決められていません。
制度の骨格(厚生労働省の公表内容より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象年齢 | 20歳以上 |
| 状態の要件 | 著しく重度の障害のため、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態 |
| 月額 | 30,450円(令和8年4月から。年度ごとに改定されます) |
| 支給の時期 | 2月・5月・8月・11月に、それぞれ前月分までをまとめて振り込み |
| 申請先 | 住所地の市区町村の福祉事務所(障害福祉の窓口) |
| 支給の開始 | 申請した月の翌月分から |
毎月振り込まれるわけではなく、3か月分をまとめて年4回受け取る形です。生活費の計画を立てるときは、この間隔を前提にしてください。
申請した月の翌月分から、という点は取り返しがつきません。要件を満たしていた期間があっても、さかのぼって支給されるものではありません。該当しそうだと思った時点で窓口に相談するのが、金額としていちばん大きい差になります。
対象になる人
もっとも誤解されているのが、「身体障害者手帳○級だから対象」「要介護○だから対象」という形では決まらないという点です。手当には手当独自の認定基準があり、判定は所定の診断書に基づいて行われます。
問い合わせの多い状況と、考え方
手帳は持っているが、等級が該当するか分からない
要介護認定は受けているが、障害の手続きはしていない
複数の障害が重なっている
本人は施設に入らず自宅にいるが、日中は通所している
支給されない3つの場合
要件に当たっていても、次のいずれかにあたると支給されません。ここを知らずに申請して却下される、あるいは受給中に止まるのが、いちばん多い行き違いです。
支給されない場合
| 区分 | 内容 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 施設入所 | 障害者支援施設などの施設に入所しているとき | 入所が決まった時点で届け出が必要です。黙っていると、あとで返還を求められます |
| 長期入院 | 病院等に継続して3か月を超えて入院しているとき | 「継続して」の数え方(いったん退院した場合の扱い)は窓口に確認してください |
| 所得超過 | 本人または配偶者・扶養義務者の前年所得が限度額を超えるとき | 毎年の現況届で確認されます。世帯の状況が変われば結果も変わります |
この制度は在宅であることが前提です。入所や長期入院は、制度が想定する状態から外れる、という考え方です。
入院については、「3か月を超えて」なので、3か月以内の入院を繰り返す場合と、そのまま続く場合とで扱いが変わります。退院と再入院を挟んだときにどう数えるかは自治体の運用に関わるため、入院が長引きそうな段階で先に窓口へ相談してください。
所得制限の見方
所得制限は、本人だけでなく、配偶者および扶養義務者の所得も見られます。同居している家族の所得によって、本人の状態が要件を満たしていても支給されないことがあります。
所得制限の考え方(本人・扶養親族0人の場合の例)
| 見るもの | 金額の目安 |
|---|---|
| 所得額 | 3,758,000円 |
| 収入額(給与のみの場合の目安) | 5,372,000円 |
扶養親族の人数によって限度額は上がります。扶養義務者の限度額は本人の限度額とは別に定められています。年度ごとに改定されるため、必ず申請時点の数字を窓口で確認してください。
「所得」は収入から必要な控除を引いたあとの金額です。収入がいくらだから駄目、と自己判断で諦めないでください。控除の内容によって結果は変わります。窓口では源泉徴収票や課税証明書をもとに、その場で見てもらえます。
診断書で決まるということ
判定の材料は、市区町村所定の様式による診断書です。この書類の書かれ方で結果が変わります。だからこそ、渡し方に手順があります。
診断書を依頼するときの順序
- ① 先に窓口で様式をもらう様式は市区町村指定です。一般的な診断書では受け付けられません。障害の種別によって様式が分かれていることもあります。
- ② 作成できる期間を確認する作成日から一定期間内のものに限る、という条件がついていることがあります。早く書いてもらいすぎると出し直しになります。
- ③ 日常生活の状況をメモにして渡す医師は診察室での様子しか見ていません。食事・排泄・入浴・移動・意思疎通について、家庭で誰がどれだけ手を貸しているかを書いたメモを添えてください。これが最も効きます。
- ④ 費用は自己負担であることを見込む診断書の作成料は保険がききません。金額は医療機関ごとに異なります。
- ⑤ 提出前に窓口で記載漏れを見てもらう空欄があると差し戻され、書き直しにまた時間と費用がかかります。
医師に渡すメモに書くこと(介護している人が書く)
- 食事:自分で食べられるか。刻む・とろみをつける等の手間があるか。誰が介助するか
- 排泄:昼と夜で違いがあるか。おむつか、誘導か。夜間に何回起きるか
- 入浴:洗身・移乗のどこに手が要るか。週に何回、誰が行うか
- 移動:屋内と屋外で違うか。転倒が何回あったか
- 意思疎通:意思を伝えられるか。呼びかけへの反応はどうか
- 見守り:目を離せない時間が1日にどれくらいあるか
- 夜間:介護している人が続けて眠れる時間はどれくらいか
申請の順序
申請から支給までの流れ
- ① 市区町村の障害福祉の窓口に相談する高齢の方でも窓口は障害福祉です。ここで様式一式を受け取ります。
- ② 所定の診断書を医師に書いてもらう上の手順のとおり。ここが最も時間がかかります。
- ③ 申請書・診断書・所得の書類等を提出する本人名義の振込口座、マイナンバーの確認書類なども求められます。必要書類は窓口で確認してください。
- ④ 認定と決定通知を待つ支給は申請した月の翌月分からです。
- ⑤ 毎年の現況届を出す出さないと支給が止まります。届く時期を家族で共有しておいてください。
- ⑥ 状況が変わったら届け出る入所・長期入院・転居・世帯の変更は届け出が必要です。
受け取ったあとの使い道
この手当は使いみちが決められていません。そして実務上、いちばん多い使い道が「介護保険では頼めないことを、自費で頼む費用」です。
介護保険の訪問介護は本人の日常生活に必要な行為に限られるため、同居家族の分の家事、通院の付き添い、外出の同行、庭木の手入れなどは対象外です。年4回まとまって入る手当を、この部分にあてる形が現実的です。
→ 保険で頼めない4分類を見る/おむつや用具は制度で出るか/見守り機器の自治体の助成
保険で頼めない部分だけ、自費で頼めます
手当が入る月にまとめて依頼する、という使い方もできます。相談・見積もりは無料です。
- 相談・見積もりは無料です
- 介護保険では対応できない内容にも対応しています
- 24時間365日の相談体制があります
よくある失敗
該当しないと思い込んで申請しない
手帳の等級や要介護度で判断してしまう例が最も多い。判定は診断書で行われます。窓口で状態を伝えれば、該当しそうかどうかは教えてもらえます。
入所・入院を届け出ない
支給されない期間の分は、あとで返還を求められます。入所が決まった時点、入院が長引きそうな時点で届け出てください。
現況届を出し忘れる
毎年決まった時期に届きます。本人あての郵便を家族が確認できる形にしておいてください。支給が止まってから気づくことが多い。
診断書を医師に丸投げする
診察室では見えない部分が判定の中心です。家庭での介護の実際を書いたメモを添えるかどうかで、書かれる内容が変わります。
収入だけを見て諦める
所得は収入から控除を引いたあとの金額です。控除の内容で結果が変わります。窓口で確認してから判断してください。
よくある疑問
障害者手帳がなくても申請できますか。
障害年金や特別障害給付金と一緒に受け取れますか。
介護保険のサービスを使っていると受け取れませんか。
ショートステイを使っている場合はどうなりますか。
申請から振り込みまでどのくらいかかりますか。
受け取ったお金の使いみちに制限はありますか。
介護保険で頼めないことの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。