理由書が書けるのは、ケアマネジャーだけではない
介護保険の住宅改修を申請するには、工事の見積書や図面のほかに「住宅改修が必要な理由書」が要ります。この紙は施主が書くものではなく、決められた立場の人が書きます。ケアマネジャーがいない、担当が書けないと言った——そこで止まってしまう人が多いので、誰が書けるのかを国の通知と自治体のQ&Aから並べます。
理由書とは何のための紙か
住宅改修費は、工事をしたから出るお金ではありません。その人の身体の状態から見て、その工事が必要だと説明できるから出るお金です。理由書は、その説明を担当する専門職が引き受けた、という記録にあたります。
だから理由書には、工事の内容ではなく本人の状況が書かれます。どこで転びそうになっているか、いまどうやって移動しているか、工事のあと何ができるようになるか。工事の見積書とは役割が違います。
ここを取り違えると、「業者に頼んだから全部やってくれる」と思って待ってしまい、申請が進みません。見積書は業者が、理由書は専門職が出します。出どころが2つに分かれている、というのが最初に押さえるところです。
国の通知に書いてある作成者
厚生労働省の老企第42号は、理由書の作成者について次のように書いています。
居宅サービス計画等を作成する介護支援専門員及び地域包括支援センター……または市町村が行う福祉用具・住宅改修支援事業等の専門家
読むと分かるとおり、「介護支援専門員」だけを指してはいません。地域包括支援センターと、市町村の事業の専門家が並んでいます。つまり、担当のケアマネジャーが書けない事情があっても、道は残っています。
自治体のQ&Aが挙げている職種
国の通知は幅のある書き方なので、実際に誰が書けるかは市区町村が示しています。尼崎市のQ&Aは、書ける人を次のように挙げています。
・居宅介護支援事業所(小規模多機能型居宅介護を含む)に所属するケアマネジャー
・地域包括支援センターに所属するケアマネジャー、社会福祉士、保健師
・理学療法士、作業療法士
・福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上
理由書を書ける立場(尼崎市のQ&Aに挙がっているもの)
| 立場 | どこにいる人か | 頼むときの入口 |
|---|---|---|
| ケアマネジャー | 居宅介護支援事業所 | いま担当している人。まずここ |
| ケアマネジャー・社会福祉士・保健師 | 地域包括支援センター | 担当がいない・要支援のときの入口 |
| 理学療法士・作業療法士 | 病院・訪問リハビリ・通所リハビリ | 退院前後はここが動きやすい |
| 福祉住環境コーディネーター2級以上 | 資格者。工事業者が持っていることがある | 自治体によって扱いが違う |
この一覧は尼崎市のQ&Aによるものです。認める範囲は市区町村ごとに違います。お住まいの窓口で必ず確認してください。
注目してほしいのは理学療法士・作業療法士が入っていることです。入院中や退院直後で、まだ担当のケアマネジャーが決まっていない時期でも、リハビリの担当者が動ける可能性があるということです。
ケアマネジャーがいない場合
要支援の人、認定を受けたばかりの人、退院したばかりの人は、担当のケアマネジャーがいないことがあります。この場合の入口は地域包括支援センターです。
担当がいないときの動き方
- 市区町村の介護保険担当窓口に電話する住所を伝えて、担当の地域包括支援センターがどこかを聞きます。
- そのセンターに用件を伝える「介護保険の住宅改修をしたい。理由書の作成をお願いしたい」と伝えます。
- 本人の状況を話し、見てもらうどこで困っているか、いまどうやって移動しているか。訪問して現地を見てもらいます。
- 並行して工事業者に見積もりを頼む工事の契約はまだしません。見積もりだけを出してもらいます。
- 書類がそろってから申請する理由書と見積書がそろったら、工事の前に市区町村へ申請します。
なお、入院中で退院後の自宅を整える場合は、病院の医療ソーシャルワーカー(相談室)に先に相談したほうが早いことがあります。退院日から逆算して、誰が理由書を書くかを決めてくれます。
「書けない」と言われたとき
担当のケアマネジャーに断られることがあります。理由はいくつかあり、それぞれ次の手が違います。
断られる理由と、次にどうするか
| 言われたこと | 背景にあること | 次の手 |
|---|---|---|
| 「うちでは書いていません」 | 事業所として理由書を受けていない | 地域包括支援センターに相談する |
| 「その工事は対象外です」 | 6種類に当たらないと判断された | どの部分が対象外かを聞く。対象部分だけに絞れないか相談する |
| 「まず認定を受けてください」 | 要介護・要支援の認定がまだ | 認定申請が先。工事は待つ |
| 「業者を決めてから」 | 見積書がないと書けない | 見積もりを先に取る。契約はしない |
断られた理由をそのまま持ち帰らず、どこで詰まっているのかを一段深く聞くのが早道です。
工事業者が書いた理由書はどうなるか
工事業者が福祉住環境コーディネーター2級以上を持っていて、そのまま理由書も書く、という提案を受けることがあります。手間は減りますが、工事をする人が「この工事は必要だ」と書く形になります。
この点について、自治体によって扱いが分かれます。認めているところ、条件を付けているところ、認めていないところがあります。「業者が書けます」と言われたら、その場で決めずに、市区町村の窓口に「工事業者が理由書を書いてもよいか」と確認してください。
確認せずに進めて、あとから理由書を書き直しになると、工事の日程ごとやり直しになります。電話1本で防げます。
確認の順序
理由書で止まらないための順序
- 介護保険の認定(要支援・要介護)を受けているか確認する
- 担当のケアマネジャーがいるか確認する。いなければ地域包括支援センターへ
- 市区町村の窓口に「理由書を書けるのはどの職種か」を聞く
- 退院前後なら、病院の相談室と理学療法士・作業療法士にも声をかける
- 工事業者が書けると言われたら、その可否を窓口に確認する
- 理由書と見積書がそろってから、工事の前に申請する
→ 先に出すお金を10分の1にする払い方/理由書は誰が書くのか/工事のあとに気づいたとき/20万円は何回に分けられるか/借りている家で工事するとき/借りるか買うかを選ぶ/保険で頼めないこと一覧
制度の手続きが進むまでの間、生活のほうを支える
認定や申請を待っている間も、日々の介助は続きます。保険の外で頼める部分だけを、必要な分だけ組み合わせる方法があります。相談・見積もりは無料です。
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確認に使った一次情報
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 第1回 参考資料2)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001501983.pdf
- 厚生労働省 老企第42号「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」法令等データベース
- 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは
よくある疑問
理由書は自分で書けますか。
理由書の作成にお金はかかりますか。
様式はどこでもらえますか。
担当のケアマネジャーを変えたばかりです。誰が書きますか。
福祉住環境コーディネーター2級を家族が持っています。書けますか。
介護保険の認定を受ける前に理由書だけ用意できますか。
介護保険で頼めないことの記事一覧
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