20万円は一度に使い切らなくていい
介護保険の住宅改修費は生涯で20万円です。この「生涯」という言葉から、一度きりの一発勝負だと思い込んでしまう人がいます。実際には分けて使えますし、条件を満たすと枠が戻ります。国の通知に書いてある範囲を整理します。
20万円という額の意味
厚生労働省の資料は、住宅改修の支給限度基準額をこう書いています。
生涯20万円(要支援、要介護区分にかかわらず定額)
読み取れることが2つあります。
1つ目。要介護度が上がっても額は増えません。要支援1でも要介護5でも20万円です。訪問介護などの区分支給限度基準額とは考え方が違います。
2つ目。20万円は工事費の上限であって、受け取る額ではありません。20万円の工事をした場合、保険から出るのはその9割(負担割合により8割・7割)です。手元から出る額は自己負担割合によって変わります。
20万円をどう読むか(自己負担1割の場合の考え方)
| 工事費 | 保険から出る分 | 自己負担 |
|---|---|---|
| 10万円 | 9万円 | 1万円 |
| 20万円 | 18万円 | 2万円 |
| 30万円 | 18万円(20万円分まで) | 12万円(超えた10万円は全額) |
自己負担割合は所得によって1割・2割・3割に分かれます。ご自身の割合は介護保険負担割合証で確認できます。
分けて使えるか
分けて使えます。20万円は「1回で使い切る券」ではなく、累計で20万円に達するまで使える枠です。
たとえば最初に玄関の手すりで8万円を使った場合、残りは12万円です。半年後に浴室の段差解消で10万円の工事をすれば、そのぶんも支給の対象になります。ただし、そのつど事前申請が必要です。一度申請したから次も自動で通る、ということはありません。
分けて使うときの流れ
- 1回目を事前に申請する理由書と見積書をそろえて、工事の前に申請します。
- 工事をして、完了の報告をするここまでで使った額が、保険者の記録に残ります。
- 2回目も、もう一度事前に申請する1回目の申請があるから自動で通る、ということはありません。理由書と見積書をあらためてそろえます。
- 残りの枠の範囲で支給される20万円から使った額を引いた分までが対象です。超えた分は全額自己負担になります。
枠が戻る2つの条件
20万円を使い切ったあとでも、枠が改めて使えるようになる場合が2つあります。厚生労働省の老企第42号に書かれています。
転居した場合には改めて支給限度基準額までの住宅改修費の支給を受けることが可能となる
介護の必要の程度の段階が3段階以上上がった場合……改めて支給限度基準額(20万円)までの住宅改修費の支給を受けることが可能
尼崎市のQ&Aも、同じことを利用者向けの言葉で書いています。
申請者の転居や要介護度が3段階以上重くなった場合は、再度、住宅改修20万円の利用が可能となります
転居した場合
住宅改修費は住宅に対して付いています。だから、住む家が変われば改めて枠が使えます。前の家で20万円を使い切っていても、引っ越した先で新しく20万円分の工事ができます。
ここで確かめておくことが3つあります。
転居でつまずくところ
同じ建物の中で部屋を移った場合
扱いは市区町村の判断によります。建物が同じなら転居に当たらないとされることがあります。動く前に窓口で確認してください。
市区町村をまたいで引っ越した場合
保険者が変わります。転入先の市区町村に、住宅改修の記録がどう引き継がれるかを確認してください。
引っ越し先が借家の場合
所有者の承諾書が必要です。契約の前に、工事の可否を大家さん・管理会社に確認しておくと安全です。
借りている家の場合の進め方は借りている家で工事するときにまとめました。
3段階以上上がった場合
もう1つが、介護の必要の程度が3段階以上上がった場合です。要介護度そのものではなく、住宅改修で使う「介護の必要の程度の段階」という区分で数えます。
介護の必要の程度の段階(住宅改修で使う区分)
| 段階 | 要支援・要介護の区分 |
|---|---|
| 第1段階 | 要支援1(経過的要介護を含む) |
| 第2段階 | 要支援2・要介護1 |
| 第3段階 | 要介護2 |
| 第4段階 | 要介護3 |
| 第5段階 | 要介護4 |
| 第6段階 | 要介護5 |
最初に住宅改修費を使ったときの段階を基準にして、そこから3段階以上上がったかどうかで判定します。判定の基準日と数え方は市区町村に確認してください。
注意したいのは、基準になるのは「最初に住宅改修費を使ったときの段階」だという点です。認定を受けたときの段階でも、いまの段階でもありません。数え間違えやすいところなので、窓口で「基準になるのはいつの段階ですか」と確認してください。
わざと残す考え方
ここまでを踏まえると、最初の工事で20万円を使い切らないという考え方が出てきます。
体の状態は変わります。いま必要なのは玄関の手すりでも、1年後にはトイレや浴室が問題になるかもしれません。最初に「せっかくだから全部やりましょう」と勧められて枠を使い切ると、次に本当に必要になったときに使えません。
残しておく判断が効く場面
枠は減らしても戻りません。いま必要な分だけ使うのが基本の姿勢です。
退院直後で、これから体の状態が変わりそうなとき
業者が浴室から玄関まで一括で提案してきたとき
6種類に当たらない工事も見積もりに入っているとき
そもそも対象になる工事
介護保険で対象になる住宅改修(厚生労働省の資料にある6種類)
| 種類(原文) | 実際に頼まれることの例 | |
|---|---|---|
| (1) | 手すりの取付け | 廊下・階段・浴室・トイレ・玄関 |
| (2) | 段差の解消 | 敷居を下げる、スロープを固定する、浴室の床をかさ上げする |
| (3) | 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更 | 畳を板に、浴室の床を滑りにくい材料に替える |
| (4) | 引き戸等への扉の取替え | 開き戸を引き戸に、ドアノブをレバーに替える |
| (5) | 洋式便器等への便器の取替え | 和式を洋式にする |
| (6) | その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修 | 手すりを付けるための下地補強、床を変えるための給排水工事 |
出典:厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」。名称は原文のまま。この6つに当たらない工事は、介護のためであっても保険の対象になりません。
確認の順序
20万円をむだにしないための確認
- これまでに住宅改修費をいくら使ったかを、市区町村の窓口で確認する
- 最初に使ったときの「介護の必要の程度の段階」を確認する
- いまの段階が、そこから3段階以上上がっていないか数える
- 引っ越しの予定があるなら、転居後に工事するほうが有利でないか考える
- 見積書で、対象になる工事と対象外の工事を分けてもらう
- いま必要な分だけに絞れないか、ケアマネジャーと相談する
→ 先に出すお金を10分の1にする払い方/理由書は誰が書くのか/工事のあとに気づいたとき/20万円は何回に分けられるか/借りている家で工事するとき/借りるか買うかを選ぶ/保険で頼めないこと一覧
工事で解決しない部分を、人の手で埋める
手すりを付けても、入浴や移動に人の手が要る場面は残ります。保険で足りない部分だけを必要な分だけ頼む方法があります。相談・見積もりは無料です。
- k
- a
- i
- g
- o
確認に使った一次情報
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修の概要」(介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会 第1回 参考資料2)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001501983.pdf
- 厚生労働省 老企第42号「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」法令等データベース
- 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは
よくある疑問
20万円は1人あたりですか、1世帯あたりですか。
使い切っていない残りに期限はありますか。
3段階上がった判定は、自動で教えてもらえますか。
転居のたびに何度でも使えますか。
施設に入所したら使えますか。
20万円を超える工事はできませんか。
介護保険で頼めないことの記事一覧
一次情報の確認先
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