通知を待っていると、知らないうちに2年が過ぎる
医療費と介護費を1年分まとめて計算し、限度額を超えた分が戻る制度があります。多くの市区町村は該当しそうな人へ案内を送りますが、その1年のあいだに引っ越した人や、加入する医療保険が変わった人には、案内が届かないことがあります。期限は基準日の翌日から2年です。ここを整理します。
どんな制度か
正式には高額医療・高額介護合算療養費といいます。同じ世帯の中で、医療保険の自己負担と介護保険の利用者負担を1年分合計し、限度額を超えた分が戻ってくる仕組みです。
月ごとの上限である高額介護サービス費や、医療の高額療養費とは別の制度です。順序としては、まず月ごとの制度で戻る分を戻し、そのうえで残った自己負担を1年分合算します。横浜市は「高額療養費に該当する場合は、高額療養費の自己負担限度額の金額までが対象」「高額介護サービス費に該当する場合は、高額介護サービス費の自己負担限度額の金額までが対象」と説明しています。同じ支出を二重に数える制度ではありません。
両方に負担がないと1円も出ない
いちばん多い誤解がここです。医療保険と介護保険の両方に自己負担がある世帯が対象です。東京都後期高齢者医療広域連合は「後期高齢者医療制度または介護保険の自己負担額のいずれかが0円の場合は対象となりません」と明記しています。
対象になるかどうかの入口
| その1年間の状況 | この制度の対象 |
|---|---|
| 医療費も介護費も自己負担があった | 対象になり得る |
| 医療費だけで、介護保険は使っていない | 対象外 |
| 介護保険だけで、医療の自己負担がなかった | 対象外 |
| どちらもあるが、合計が限度額に届かない | 支給なし |
| 限度額を超えたが、超えた額が500円以下 | 支給されない |
「医療費が高かったから対象のはず」という理由では対象になりません。介護保険の利用者負担が0円の年は、この制度では計算が成り立ちません。
計算期間と基準日
期間は毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。川崎市は「毎年8月1日からその翌年の7月末までの1年間」としています。暦年(1〜12月)でも年度(4〜3月)でもない点に注意してください。
期間と窓口
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算期間 | 8月1日から翌年7月31日までの1年間 |
| 基準日 | 7月31日 |
| 申請先 | 基準日の時点で加入している医療保険 |
| 介護側の書類 | 市区町村の介護保険担当が発行する自己負担額証明書 |
| 申請できる期間 | 基準日の翌日から2年以内(川崎市の案内) |
| 支給の時期 | 大阪市の案内では、8月から受付し、12月ないし1月以降の支給 |
申請先は「いま加入している保険」ではなく「7月31日時点の保険」です。8月以降に会社を辞めた、後期高齢者医療に移った、という場合は、基準日の保険がどこだったかを先に確認してください。
限度額の一覧
限度額は年齢と所得で分かれます。以下は公表されている区分です。自分がどの区分に当たるかは保険者が判定します。
70歳未満(大阪市の案内より)
| 基礎控除後の所得 | 1年間の限度額 |
|---|---|
| 901万円超 | 212万円 |
| 600万円超901万円以下 | 141万円 |
| 210万円超600万円以下 | 67万円 |
| 210万円以下 | 60万円 |
| 市町村民税非課税 | 34万円 |
所得はその年度の基礎控除後の総所得金額等です。世帯の中に複数の被保険者がいる場合は、合算して判定されます。
後期高齢者医療+介護保険(東京都後期高齢者医療広域連合の案内より)
| 区分 | 1年間の限度額 |
|---|---|
| 現役並み所得Ⅲ(課税所得690万円以上) | 212万円 |
| 現役並み所得Ⅱ(課税所得380万円以上) | 141万円 |
| 現役並み所得Ⅰ(課税所得145万円以上) | 67万円 |
| 一般Ⅱ | 56万円 |
| 一般Ⅰ | 56万円 |
| 区分Ⅱ(住民税非課税) | 31万円 |
| 区分Ⅰ(住民税非課税・所得が一定以下) | 19万円 |
住民税が非課税かどうかで31万円と56万円のあいだに大きな段差があります。世帯の課税状況が変わった年は、区分が変わっている可能性があります。
合算できない費用
領収書の合計をそのまま足すことはできません。制度の対象外の支出が相当あります。川崎市と横浜市の案内から整理すると次のとおりです。
合算に入る/入らない
| 区分 | 扱い |
|---|---|
| 医療保険の自己負担(保険適用分) | 入る |
| 介護保険の利用者負担(保険適用分) | 入る |
| 差額ベッド代 | 入らない |
| 入院時の食費・居住費 | 入らない |
| 健康診査費・予防接種費 | 入らない |
| 介護の利用限度額を超える自己負担分 | 入らない |
| 住宅改修費 | 入らない |
| 福祉用具の購入費 | 入らない |
| 施設入所時等の食費・居住費 | 入らない |
入らない費目は、いずれも「保険の給付の外にある実費」です。金額が大きい費目ほど対象外になりやすい、という点は先に知っておいたほうがいい部分です。
案内が届かない人がいる
ここがこのページでいちばん伝えたい部分です。横浜市は、「毎年8月から翌年7月末までの間に、他市町村より横浜市に転入された方、他の医療保険から国民健康保険に移られた方」については「勧奨通知が発送されない場合があります」と案内しています。
理由は単純で、市区町村は自分のところにある自己負担の記録しか持っていないからです。1年の途中で保険者が変わった人は、記録が分断されていて、該当するかどうかを市区町村側が判断できません。だから通知が出せません。
通知を待ってはいけない人
- 計算期間(8月〜翌7月)の途中で、他の市区町村から転入した
- 会社を辞めて、健康保険から国民健康保険に切り替わった
- 75歳になって、後期高齢者医療制度に移った
- 家族の扶養から外れた、または扶養に入った
- 同じ期間に、医療の入院と介護サービスの両方があった
当てはまる場合は、自分から基準日時点の医療保険に問い合わせてください。そのうえで、以前に加入していた保険者と市区町村から自己負担額証明書を取り寄せることになります。横浜市も川崎市も、この証明書が必要になる場面として「転入した方」「他の医療保険から移られた方」を挙げています。
状況ごとの考え方
親が入院と介護の両方を使った年がある
案内が届いたことがない
計算期間の途中で亡くなった
施設に入っていて費用が高い
世帯を分けている
制度で戻らない部分を、必要な分だけ頼む
差額ベッド代や食費、住宅改修費は、この制度では戻りません。介護保険で頼めない付き添いや家事を、必要な時間だけ外に出す選択肢もあります。
- 相談・見積もりは無料です
- 介護保険では対応できない内容にも対応しています
- 24時間365日の相談体制があります
申請の順序
この順に確認する
- その1年に、医療と介護の両方の自己負担があったか確かめる片方が0円なら対象外です。ここで終わります。
- 基準日(7月31日)に加入していた医療保険を特定する申請先はここです。いま加入している保険ではありません。
- 市区町村の介護保険担当で、介護の自己負担額証明書を申請する医療保険が国民健康保険や後期高齢者医療以外(会社の健康保険など)の場合は、この証明書を添えて申請します。
- 期間中に保険者が変わっていれば、前の保険者からも証明書を取る転入・転職・75歳到達などが該当します。ここを飛ばすと計算が不足します。
- 基準日の医療保険に支給申請書を出す大阪市はマイナンバーの記入と提示が必要としています。本人確認書類も準備してください。
- 支給の時期を確認する大阪市の案内では8月から受付し、支給は12月ないし1月以降です。すぐ振り込まれる制度ではありません。
よくある取りこぼし
領収書の合計で判断してしまう
差額ベッド代・食費・居住費・住宅改修費・福祉用具購入費は合算に入りません。領収書の総額が限度額を超えていても、対象額は下がります。
通知が来ないから対象外だと考える
期間の途中で転入・保険の切り替えがあった人には、通知が出せないことがあります。通知の有無は該当の有無ではありません。
いま加入している保険に申請してしまう
申請先は基準日(7月31日)時点の医療保険です。8月以降に変わっていても、申請先は変わりません。
2年の起算日を勘違いする
川崎市は「基準日(7月31日)の翌日から2年以内」としています。申請書を書いた日でも、支払った日でもありません。
500円以下でも申請すれば出ると思う
限度額を超えた額が500円以下の場合は支給されません。手間をかける前に、超過額の見当をつけてください。
月ごとの制度を申請していない
先に高額療養費と高額介護サービス費で戻る分を戻すのが順序です。そちらが未申請だと、そもそもの自己負担額の整理が進みません。
よくある疑問
計算期間はいつからいつまでですか。
医療費だけでも対象になりますか。
どこに申請しますか。
自己負担額証明書はどこでもらいますか。
申請の期限はありますか。
差額ベッド代は合算できますか。
住宅改修や福祉用具の購入は入りますか。
いくら戻りますか。
超えた額が少ないときはどうなりますか。
通知が届きませんでした。対象外ということですか。
世帯とは住民票の世帯のことですか。
いつ振り込まれますか。
→ 保険で頼めない4分類/月ごとの上限(高額介護サービス費)/手帳がなくても使える所得控除/先に払う額を10分の1にする払い方/施設の食費・居住費を下げる制度/腎臓・糖尿病の食事管理
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