更新を待たなくてよい。いつでも出せる
要介護度は、認定の有効期間が切れるまで変えられないわけではありません。介護保険法第29条第1項は「要介護認定を受けた被保険者は、その介護の必要の程度が現に受けている要介護認定に係る要介護状態区分以外の要介護状態区分に該当すると認めるときは、……市町村に対し、要介護状態区分の変更の認定の申請をすることができる。」としています。条文に「更新のときに」という限定はありません。
いつ出せるか
条文の条件は「その介護の必要の程度が現に受けている要介護認定に係る要介護状態区分以外の要介護状態区分に該当すると認めるとき」だけです。
「認めるとき」の主語は被保険者です。本人や家族が「いまの区分では合っていない」と考えたときに出せます。医師の診断書を先にそろえる必要は、条文上はありません。
区分変更を考える場面
退院して、できないことが増えた
支給限度額を使い切って、自費が出ている
認定のあとに状態が大きく変わった
逆に、状態がよくなった
いま保険の枠を超えて自費で頼んでいるものがあるなら、先にその範囲を整理しておくと、窓口で話が早くなります。→ 障害福祉の負担上限月額/高額介護サービス費
効力は申請した日にさかのぼる
ここがいちばん実務で効く条文です。介護保険法第27条第8項は1文です。
「要介護認定は、その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる。」
第29条第2項により、この規定は区分変更の認定にも準用されます。
つまり、認定が出るまでの間に受けたサービスも、さかのぼって新しい区分で扱われます。結果が出るのを待ってからサービスを増やす必要はありません。
さかのぼりがあるかないかで変わること(2026年9月13日確認)
| さかのぼりが無いと思っている場合 | 条文どおり(申請日にさかのぼる) | |
|---|---|---|
| 申請のタイミング | 結果が出てから増やす | 先に申請して、必要な分を使い始める |
| 待っている間の扱い | 旧区分の限度額のまま | 新区分の限度額で計算し直される |
| 判断の順番 | 区分が決まる → サービスを決める | 申請する → ケアマネジャーと調整する |
出典:介護保険法第27条第8項(第29条第2項により準用)。実際の給付の調整はケアマネジャーと市町村にご確認ください。
ただし「さかのぼる」のは認定の効力です。申請が却下されれば、さかのぼるものはありません。増やした分が自費になる可能性は残ります。ケアマネジャーに見通しを確認してから動くほうが安全です。
処分は30日以内
第27条第11項は期限を定めています。
「第一項の申請に対する処分は、当該申請のあった日から三十日以内にしなければならない。ただし、当該申請に係る被保険者の心身の状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には、当該申請のあった日から三十日以内に、当該被保険者に対し、当該申請に対する処分をするためになお要する期間(次項において「処理見込期間」という。)及びその理由を通知し、これを延期することができる。」
条文が定める順番
- ① 申請する市町村の介護保険の担当課へ。様式は市区町村ごとに異なります。
- ② 訪問調査を受ける第27条第2項。市町村の職員または委託先が心身の状況を調査します。
- ③ 主治医の意見を求められる第27条第3項。市町村が主治の医師に意見を求めます。
- ④ 認定審査会の審査・判定第27条第4項・第5項。
- ⑤ 30日以内に処分第27条第11項。延期するなら、30日以内に理由と処理見込期間の通知が要ります。
延期は「できる」と書かれていますが、無条件ではありません。30日以内に「あとどれくらいかかるか」と「その理由」を通知することが条件です。
30日を過ぎたときにできること
第27条第12項は、期限が守られなかった場合を定めています。
「第一項の申請をした日から三十日以内に当該申請に対する処分がされないとき、若しくは前項ただし書の通知がないとき、又は処理見込期間が経過した日までに当該申請に対する処分がされないときは、当該申請に係る被保険者は、市町村が当該申請を却下したものとみなすことができる。」
「却下したものとみなすことができる」3つの場合
| 号の条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 30日以内に処分がされない | 結果の通知が来ない |
| ② 延期の通知がない | 30日以内に理由と処理見込期間の通知が来ない |
| ③ 処理見込期間を過ぎた | 延期の通知はあったが、その期間までに処分がされない |
出典:介護保険法第27条第12項(第29条第2項により準用)。
「みなすことができる」というのは、本人の選択です。却下されたものとして扱うと、不服申立て(都道府県の介護保険審査会への審査請求)に進む道が開きます。
待たされていること自体を条文が想定していて、本人が動ける仕組みが用意されています。まず担当課に進捗を確認し、それでも動かないときに使う条文です。
市町村の側から下げることもある
区分変更は本人からの申請だけではありません。第30条第1項は市町村の側の規定です。
「市町村は、要介護認定を受けた被保険者について、その介護の必要の程度が低下したことにより当該要介護認定に係る要介護状態区分以外の要介護状態区分に該当するに至ったと認めるときは、要介護状態区分の変更の認定をすることができる。」
「低下したことにより」と書かれているとおり、これは下げる方向の規定です。被保険者証の提出を求め、新しい区分と認定審査会の意見を記載して返付するという手順も同じ条文に書かれています。
さらに第31条第1項は、次の場合に認定を取り消すことができるとしています。
認定が取り消される場合(第31条第1項)
- 要介護者に該当しなくなったと認めるとき
- 正当な理由なしに、調査に応じないとき
- 正当な理由なしに、診断命令に従わないとき
第27条第10項も、調査に応じない/診断命令に従わない場合は申請を却下できるとしています。訪問調査の日程は、都合が悪ければ早めに相談して組み直してください。無断で受けないのは不利にしかなりません。
主治医の意見と訪問調査
第27条第3項は、主治医がいない場合も想定しています。
「市町村は、第一項の申請があったときは、当該申請に係る被保険者の主治の医師に対し、……意見を求めるものとする。ただし、当該被保険者に係る主治の医師がないときその他当該意見を求めることが困難なときは、市町村は、当該被保険者に対して、その指定する医師又は当該職員で医師であるものの診断を受けるべきことを命ずることができる。」
主治医がいなくても申請はできます。市町村が指定する医師の診断を受ける形になります。
調査の委託について、第28条第5項(第29条第2項で準用)は指定居宅介護支援事業者等または介護支援専門員に委託できるとしています。つまり調査に来るのは市町村の職員とはかぎりません。
認定が出るまでの間、保険で足りない用事は保険外のサービスで補う選択肢もあります。→ 家事援助/通院の付き添い
よくある取りこぼし
更新のときまで待たないといけないと思った
第29条第1項に「更新のときに」という限定はありません。いつでも申請できます。
認定が出てからサービスを増やそうとした
第27条第8項「その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる」。ただし却下されれば自費が残ります。
医師の診断書を自分でそろえようとした
第27条第3項により、市町村が主治の医師に意見を求めます。本人が取り寄せる仕組みではありません。
30日を過ぎても待ち続けた
第27条第12項により「却下したものとみなすことができる」。不服申立てに進む道があります。
延期の通知が来ないのに、延期されたと思った
延期は「30日以内に理由と処理見込期間を通知する」ことが条件です(第27条第11項)。
訪問調査の日程を断ってしまった
正当な理由なしに応じないと、申請を却下され(第27条第10項)、認定を取り消されることもあります(第31条)。
区分は上がる方向にしか変わらないと思った
第30条は市町村が「低下したことにより」区分を変更できると定めています。
確認に使った一次情報
- 介護保険法 第29条(要介護状態区分の変更の認定)/第30条(市町村による変更)/第31条(要介護認定の取消し)/第27条第8項・第10項〜第12項(さかのぼり・却下・30日)e-Gov法令検索
2026年9月13日に e-Gov法令検索で確認した条文です。申請書の様式・添付書類・窓口の運用は市区町村ごとに異なります。お住まいの市区町村の介護保険の担当課にご確認ください。
認定が出るまでの間に頼めることを相談する
介護保険の枠で足りない用事は、保険外のサービスで頼める場合があります。相談は無料です。
- 料金・対応範囲は各社公式サイトの公表値です
- 対応可能地域は事業者により異なります
- 自治体の助成制度は市区町村により異なります
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