長期契約を結ぶ前に、やめるときの条件を読む
自由診療は、複数回のコースを一括で契約する形が多くあります。契約書に「中途解約はできません」と書かれていても、法律の適用がある契約なら、その記載どおりにはなりません。先に制度の枠を知っておけば、契約前に何を確認すべきかが決まります。
どの契約が法律の対象になるか
特定商取引法には「特定継続的役務提供」という枠があり、美容医療はこの枠に含まれています。ただし、すべての自由診療が対象になるわけではありません。期間と金額の両方の条件を満たす契約が対象です。
特定継続的役務提供の期間・金額の条件(消費者庁の公表内容より)
| 役務 | 期間 | 金額 |
|---|---|---|
| 美容医療 | 1月を超える | 5万円を超える |
| エステティック | 1月を超える | 5万円を超える |
| 語学教室・学習塾・家庭教師・パソコン教室 | 2月を超える | 5万円を超える |
| 結婚相手紹介サービス | 2月を超える | 5万円を超える |
美容医療とエステティックは「1月を超える」、それ以外は「2月を超える」です。金額はいずれも5万円超。
つまり、1回で完結する施術や、総額5万円以下の契約は、この枠の外ということになります。逆に、数か月にわたるコースを十数万円で一括契約する形は、条件に当てはまることが多い形です。
「美容医療」の定義
ここでいう美容医療は、消費者庁の説明では次のように定義されています。
読むと分かるとおり、この定義は「皮膚」「体型」「体重」「歯」を挙げています。そのため、自由診療の中でも、この定義に当てはまるかどうかがはっきりしないものがあります。
定義に当てはまるかの読み方
| 契約の内容 | 定義との関係 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 脱毛・しみやたるみへの処置 | 「皮膚を清潔にし若しくは美化し」に読める | 契約書に特定継続的役務提供の記載があるか |
| 脂肪の減少を目的とする処置 | 「体型を整え、体重を減じ」に読める | 同上 |
| 歯の漂白 | 「歯牙を漂白する」と明記されている | 同上 |
| 育毛・発毛を目的とする治療 | この定義から当てはまるかは、はっきりしない | 契約書の記載を確認し、不明なら消費生活センターに相談する |
| 1回で完結する手術 | 期間の条件(1月を超える)を満たさないことがある | 契約の期間と総額を確認する |
消費者庁のQ&Aには、育毛について「一過程に過ぎず、実現する目的が異なる場合には該当しないと考えられる」という趣旨の記載があります。
「自由診療だから全部クーリング・オフできる」とは限りません。逆に「契約書に書いていないから対象外」とも限りません。判断のもとになるのは契約の内容です。
クーリング・オフ(8日)
特定継続的役務提供にあたる契約は、法律で定められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録により契約を解除できます。
クーリング・オフの進め方
- ① 起算日を確認する8日の起算日は「契約した日」ではなく、法律で定められた書面を受け取った日。書面に日付があるか確認する。
- ② 書面か電磁的記録で出す口頭で伝えるだけにしない。日付と内容が残る形にする。
- ③ 控えを残す出した内容と、出した日が分かるものを手元に保管する。
- ④ 関連商品も一緒に扱う薬や化粧品を同時に購入している場合、その扱いも一緒に申し出る。
- ⑤ 8日を過ぎていても諦めない書面が交付されていない、記載に不備があるなど、期間が進んでいないと扱われる場合がある。消費生活センターに相談する。
カウンセリングで契約条件まで確認する
契約期間・総額・中途解約の扱いは、契約前のカウンセリングで確認できます。
- 費用・施術内容は各医療機関の公表値です
- 自由診療は医療機関により費用が異なります
- 無料カウンセリングの範囲は各院の公表内容をご確認ください
中途解約と損害賠償の上限
クーリング・オフの期間を過ぎたあとでも、特定継続的役務提供にあたる契約は、途中で解約できます。そのとき事業者が請求できる金額には、上限が定められています。
美容医療の中途解約で事業者が請求できる上限(消費者庁の公表内容より)
| 時点 | 請求できるもの | 上限 |
|---|---|---|
| 施術が始まる前に解約 | 契約の締結・履行に通常要する費用 | 2万円 |
| 施術が始まったあとに解約 | すでに提供された施術の対価+損害賠償等 | 5万円、または契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額 |
「すでに受けた分の対価」は別に精算されます。上限が定められているのは、それに加えて請求される部分です。
開始後に解約したときの見方
- ① すでに受けた施術の対価回数単価が契約書に書かれているか確認する
- ② 上限の対象になる部分5万円 と 契約残額の20% のうち低い額
- ③ 既払金一括で払っている場合、いくら払ったか
③ −(① + ②)が、返ってくる方向の金額の目安になります。①の単価が契約書に書かれていないと、この計算ができません。
だから契約前に「1回あたりの単価」を確認しておく価値があります。総額だけの契約だと、途中でやめたときに「すでに受けた分」がいくらなのかを、あとから争うことになります。
一緒に買った薬や化粧品の扱い
施術と一緒に、薬や化粧品などを購入する形になっていることがあります。これらは「関連商品」として、施術の契約と併せて解除の対象になる場合があります。
関連商品について確認すること
- 契約書に関連商品として記載されているか:記載の有無が扱いに関わります
- 開封したかどうか:使用・開封したものの扱いは商品によって異なります
- 個別に契約が分かれていないか:施術と商品で契約書が別になっている場合があります
- 返送の方法と費用:どちらが負担するかを確認します
「施術はやめるが薬は続ける」という形を選べる場合もあります。まとめて解除するか、分けるかを自分で決めてから申し出てください。
医療ローンを組んでいる場合
一括払いではなく、信販会社の医療ローン(分割払い)を組んでいる場合、関係する相手が「医療機関」と「信販会社」の2つになります。
それぞれに何を伝えるか
| 相手 | 何の話をするか | 注意 |
|---|---|---|
| 医療機関 | 施術契約の解除・精算 | 解約の申し出はここが起点 |
| 信販会社 | 支払いの停止・契約の扱い | 解約したことが伝わるまで引き落としが続くことがある |
| 両方 | 解約の日付をそろえる | 日付がずれると、精算の計算も合わなくなる |
医療機関に解約を申し出ただけで、自動的に引き落としが止まるとは限りません。信販会社側の手続きも確認してください。
引き落としが続いている間も、記録は残しておいてください。あとで精算するときの根拠になります。
契約前に確認する項目
ここまでの制度を踏まえると、契約前に確認すべきことは絞られます。カウンセリングの場で、次の6つを聞いてください。
契約前に聞く6項目
- 契約の期間と総額:1月を超えるか、5万円を超えるか。制度の対象かどうかがここで決まります
- 1回あたりの単価:途中でやめたときの精算に直接使います
- この契約は特定継続的役務提供にあたるか:契約書に記載があるか確認します
- 中途解約の手続き:どこへ、どういう形で申し出るか
- 関連商品の有無:薬・化粧品が契約に含まれているか、別契約か
- 支払方法:一括か医療ローンか。ローンなら信販会社の名前も控えます
複数院で契約条件を比べる
施術内容・期間・総額の考え方は医療機関によって異なります。複数のカウンセリングで比べられます。
- 費用・施術内容は各医療機関の公表値です
- 自由診療は医療機関により費用が異なります
- 無料カウンセリングの範囲は各院の公表内容をご確認ください
相談先
公的な相談窓口
- 消費者ホットライン 188:最寄りの消費生活センターにつながります
- 国民生活センター:消費者トラブルの解説と相談窓口の案内があります
- 消費者庁 特定商取引法ガイド:特定継続的役務提供の条文・Q&Aが公開されています
- 都道府県の医療安全支援センター:医療に関する相談
相談するときは、契約書・同意書・領収書・支払明細・やり取りの記録をそろえてから連絡すると、確認が早く進みます。
よくある失敗
契約書に「解約不可」と書かれているのを鵜呑みにする
特定継続的役務提供にあたる契約であれば、中途解約は法律上認められています。記載だけで判断しないでください。
8日の起算日を契約日だと思い込む
起算日は法律で定められた書面を受け取った日です。書面の日付を確認してください。
単価を確認せずに総額だけで契約する
途中でやめたときに「すでに受けた分」の計算ができず、精算で争うことになります。
医療機関にだけ解約を伝える
医療ローンを組んでいる場合、信販会社側の手続きが残ります。引き落としが続くことがあります。
即日契約を求められて応じる
契約条件の確認はあとからできません。割引の期限と契約の内容は別の話です。
育毛・発毛の契約も当然に対象だと考える
定義に当てはまるかがはっきりしない領域です。契約書の記載を確認し、不明なら相談してください。
よくある疑問
よくある疑問
契約書に「中途解約はできません」と書かれています。
すでに何回か施術を受けています。もう解約できませんか。
AGA治療の契約も対象になりますか。
クーリング・オフの書面はどう書けばよいですか。
解約を申し出たら、キャンペーン価格の差額を請求されました。
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一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。